なぜ農業をやるのか?

もともとサラリーマンで転勤族をしておりまして、日本の北から南まで渡り歩いておりました。仕事自体は楽しく充実しておりましたが、子供が大きくなるにつれ会社都合の転勤生活ではなく、自分でコントロールする人生にシフトするため、定住するなら故郷の八戸と決め脱サラを決意しました。では何を生活の糧にしようかと考えましたが、折角の大きな人生の転換点、中途半端なことはせずに思いっきり自分のやりたいことにチャレンジしてみようと、農業とワインづくりの道を歩き始めました。

なぜ農業をやりたかったのか?なぜワインを作りたかったのか?自分の心に聞いてみると、昔とあるワイナリーの代表(この方も異分野からのワイナリー参入)の言葉が今でも自分の心に残っていることに気づきました。


「自分で1からモノを作ってみたかったんだ」

1からモノを作るという行為は生きる上での基本の部分だと思います。今でこそ世の中にモノが溢れ、お金を出せば何でも手に入る時代ですが、それも誰かが作ったものを流通の仕組みの中で手に入れているだけで、誰かのおかげて生きているわけです。無人の荒野に投げ出された時に1からモノを作れるということは生きることに直結する、要するに人間の本能に直結する部分なんだと思います。自分の心の欲求に素直に耳を傾けた時、少なくとも自分にはその欲求があることがわかりました。

自分も1からモノを作り出すことがしたいんだなぁ、1からモノを作るって最高にワクワクするなぁ、それとともに自分が好きなことで故郷にも貢献できることってなんだろうなと考え


自分の好きなもの、こと

自然、体を動かすこと、美味しい食べ物、ワイン


八戸の状況

ワイン特区になり少しづつワイン葡萄栽培とワイン生産が始まっている。

ピーマンの新興産地だが、農家の高齢化が進んいる。


自分の好きなこと×八戸=農業×ワイン

に辿り着いた次第です。


自分自身美味しい食べ物を食べたいので、自身で作った野菜で美味しい料理ができると、この上ない幸せを感じます。
これが私の農業に対するモチベーションです。

同時にその幸せを周りのみなさんにも感じてもらいたいと考えています。

地方社会では農業が基幹産業であることが多く一定割合で農家がいます。自分を含め、真剣に農業をやっている子育て世代の仲間が幸せに暮らし、次世代へと繋がる社会を作ることが地方社会の発展につながると信じ、そのために何ができるのか日々もがいております。

まだまだ未熟で小さな存在ですが、いつか思い描いた未来を実現するために仲間とともに進んでいきます。

宜しければ応援よろしくお願いします!





                                                   NanburGrapples 代表 吉田宗司

野菜のテロワールってなんだろ?

テロワールはワインで言うとこの、その土地の気候、風土、栽培方法などを現した、その土地らしさってことです。野菜にもそんな個性が出たらいいなと思います。大変難しいテーマです。その土地の気候や土壌にあった作物や品種を選択することがその第一歩だと思います。そして旬があって鮮度が美味しさに直結します。


同じ作物でも産地によって味が違う。

夏のピーマンの産地として八戸が選ばれるようになるために私たちは頑張ります。

八戸は本州最北の青森県の太平洋側にあって、夏にはオホーツク海から吹く通称「やませ」と呼ばれる風の影響で冷涼な気候であることが特徴です。さらに年間降水量が約1000mmと日本の中では降水量も少ない地域に当たります。

日本の夏も暑くなり最高気温が40℃になることも珍しくありません。夏野菜といえど暑すぎるのは苦手で30℃を超えると生育に悪影響が出ます。
八戸の冷涼な気候が良い夏野菜生産につながると信じています。

基本、いきものが好きです

てんとう虫を見るとテンション上がります。てんとう虫は益虫です。害虫のアブラムシを食べてくれます。てんとう虫がいるということはアブラムシもいるということです。自然の生態系の中でバランスが取れていればアブラムシは害になる程増えません。だから農薬を使わなくてはいけない時も益虫に影響が出ないよう配慮します。結果的に農薬を減らせるのです。

カエルがよく居ます。可愛いです。

得体の知れない生物
ヒラタアブの幼虫 
一見気持ち悪いですが益虫です。
害虫をたべてくれます。
かわいいやつです。
成虫になってもアブなのに人を食いません。
いいヤツです。

私が仲間だと思う生き物トップ5
クモ
てんとう虫
カエル
ヒラタアブ
カマキリ

彼らを見つけたら、「よろしく頼むよ」と心の中で挨拶し、できるだけそっとしておきます。蜘蛛の巣もたくさん張ってます(笑)

野菜も人間も同じだと思います

緑肥の一つ クリムゾンクローバー
緑の中の赤い花が綺麗です。

カップラーメンや菓子パンなど、とりあえずお腹がいっぱいになってカロリーが取れるものを食べていれば人間の体は大きくなります。でもその人が健康的で元気かというとそういうわけではないと思います。人が健康であるために穀物、肉、魚、野菜、果物などバランスよく食べるのと、良い農作物を作るために土の栄養バランスを整えることは同じです。

野菜に何も考えず化学肥料のみを与えて育てるのは上の人間のケースと同じで、ただその作物が大きくなれば良いということで、その作物が健康で美味しく育つことを無視しています。化学肥料の使用により量産はできるようになりましたが一方で野菜の持つ栄養分は60年前の半分から10分の1になっているとのデータもあります。

野菜も健康で美味しく育つためには栄養バランスが大事です。有機農業だろうが慣行農業だろうがこれができなければ美味しい野菜は作れません。逆にこれができれば有機農業だろうが慣行農業だろうが美味しい野菜が作れます。

私のやり方としてはまず緑肥を育て、それを土中に還すことにより、有機物を微生物が分解します。微生物が分解することで作られる栄養分は化学肥料と異なり、何かの成分が偏ることなくバランスが取れており、また複雑な形態で作物に吸収されます。例えるならば人が野菜を生で食べるのか、焼いて食べるのか、煮て食べるのかといった具合です。いろんな形で吸収された方が有効利用されやすいのです。その土台を作った上で有機肥料中心に一部化学肥料(低温時期の肥効を期待)を使います。

雑草って実は大事なんじゃないだろうか?

雑草のツユクサ
作業の邪魔になるんですが
雨上がりに咲いて綺麗です

農業指導員はみんな、雑草を隅々まで綺麗に刈らないと害虫の温床になると言います。

一方で雑草があった方が美味しい野菜ができるという農家もいます。雑草との競合や共生関係の中で野菜がたくましく育つという理屈です。

一体どちらがいいのでしょうか?

害虫は雑草の花につきやすいそうです。雑草を刈るタイミングを雑草の花が咲く前にすることで対応できそうですし、そこに益虫がいる環境を作れればそこまで大きな問題にはならないと思います。

自分の浅い経験によると雑草があることで、畑の生物多様性が保たれて、作物が菌による病気にかかりづらくなるのではないかという仮説を持っています。私共のピーマン畑では管理作業のしやすさと雑草対策を兼ねて畝と畝の間の通路に通路マットを敷きます。去年通路に通路マットを敷いたエリアは例年通りの病気の株が出てきましたが、通路マットを敷かず雑草を生やしたエリアは何となく病気が少ないんじゃないかという印象を持ってます。たまたまかも知れませんし、思い込みかも知れません。でも今年も注視していこうと思います。

雑草の管理を手作業でやることは大変手間がかかります。でも少なくとも除草剤は使いません。

イタリア品種でワインを造る

ワイン用葡萄を植える畑です。
有機農業をやっている仲間が、傾斜がきつくて野菜に使えないから、どうか?と紹介してくれました。南西向きの斜面は葡萄にとって好条件です。周りが有機JASの畑なので化学農薬を使わない条件でのオファーです。そのため葡萄も有機栽培でやることに決めました。

私はワインの中で特にイタリアワインが好きです。その多様性と自由さが面白いし、自分の性に合っているからです。だから自分もイタリア品種を使って面白くて個性的で美味しいワインを作りたいと思っています。

ただ、八戸はもともと葡萄の産地でもないですし、イタリア品種を植えている人もいないので、この土地の気候風土に合うのか未知数です。しかも有機栽培でのチャレンジはとてもハードルが高い。でもこれだけの困難を乗り越えてワインを作ることができたなら、きっとそこには感動しかないし、美味しいワインが約束されていると信じているのです。

きっとこの感動は私だけのものではなく、このワインが出来上がるまで見守ってくださった全ての方に訪れるものだと思っています。

ワインができたら八戸で一緒に飲みましょう!



自然の中で酔いどれたい